見渡す限りの大地。河北潟干拓地の農業を発信し、地域を盛り上げようと奮闘中

坂野 温さん

坂野 温さん

かほく市の南側に広がる河北潟干拓地は、東京ドームが約290個も収まるほどの広々とした土地で、野菜や穀物、乳牛を育む農地として活用されています。そんな河北潟干拓地の農家と消費者をつなぎ、地域を盛り上げる活動に取り組んでいるのが坂野温(あつし)さんです。例えば、2014年秋に初開催した「ファーマーズ・ハロウィン」も坂野さんが中心となって企画、運営するイベントの一つ。当日は採れたての野菜が並ぶマルシェ、地物食材を使ったメニューを味わえる屋台などを約1000人の来場者が楽しみました。「こんなに集まってくれるとは思ってなくて、びっくりしました」と笑顔を見せる坂野さん。企画を考えたり、協力者を求めて奔走したりと苦労もありますが、こうした取り組みを通して、一人でも多くの人に河北潟の農業に興味を持ってもらえればと、意欲を燃やしています。

東京からUターン。
建築から農業へ

かほく市生まれの坂野さんは、石川県内の高専を修了後、東京にある大学院に進学しました。当時は建築士を目指していましたが、まちづくりについて学ぶうち、大学院で勉強するよりも地域で実践することに興味が移り、2年で中退してUターン。「なだらかな山があって、海があって、人と人の距離感もほどよくて。やっぱりここがぼくの居場所だなと心地よく感じました」。
その後、河北潟で土壌改良材となる竹チップの製造に携わったことをきっかけに、“土から作る”農業の魅力に引かれ、国の「地域おこし協力隊」の制度を利用し、ハーブ農園で働くようになりました。ハーブ農園では栽培を学ぶだけでなく、商品企画や広報にも携わり、摘み取り体験やハーブを使った料理教室といった催しも企画、運営。やがて他の農家も巻き込んだ「ファーマーズ・ハロウィン」などへと発展していきました。

夢は農産加工品の
製造とブランド化

現在は河北潟干拓地の農場でアルバイトをしながら、地域活性化に取り組む坂野さん。「河北潟干拓地は、見渡す限り畑が続いている上、橋を渡らないと入れなくて、まるで外国のような雰囲気です。これだけ大きな農地は地域の財産ですし、ここでとれた農産物を多くの人に食べてほしい」と話します。そんな坂野さんがこれからの課題と考えているのが産地としての認知度アップです。そのために、これまで手がけてきたイベントを定着させるとともに、将来は干拓地の農家と協力して農産加工品を作り、河北潟ブランドとして世界中に発信していきたいと夢を描いています。